偽気功師、あるいは偽超能力治療師が使う技の例　　
Typical Demonstrations by Recent Fake Psychic Healers and Fake Qigong Masters


　相変わらず出稼ぎ偽気功師が来日して、患者から治療費を巻き上げようとするので、典型的な「見せるための技」の例を少々紹介します。気功関係の大きな催し物があると、ここぞとばかりに大量に来日して、荒稼ぎして行くので、うんざりします。


１．発熱するコイン


　実演の仕方

　実演して見せる相手に、その人の自分の財布から１円玉を出させ、それを手の中に握り締めるよう指示します。
　しばらくすると、持っていられないくらい熱くなります。
　水をつけて冷やしても、また熱くなって持てません。
　１円玉が粉をふきます。
　十分に冷めた後、記念品に相手に持って帰らせます。

　この実演は、偽気功師が一瞬、相手の手のひらを閉じさせるときに、１円玉に触ります。そのときに、薬品を付けると考えられます。この薬品は、水と反応するようです。また、一度冷めた後でも、薬品が残っているうちは、水を垂らすと、また熱くなります。
　相手に持って帰らせる前に、水で念入りに薬品を落として、拭き取ってから渡します。

　反応で生じた粉末を持って帰ろうとすると、怒り出したりしますが、そういうときは、「あなたが何を言っているのかわかりませ〜ん。日本語で話してくださ〜い」と、相手にしないようにします。ただし、最近は、トラブルが起こることを予想してボディガードを雇っている偽気功師もいます。叩き出されないように、状況をよく見て対応しましょう。

　日本では、1980年代にマリック氏が、同氏のマジック番組の中で、丸めたタバコの銀紙を使って同様の実演をしたので、記憶している人もいるでしょう。マリックさんは真面目な人なので、「超魔術」と称して「超能力」と言っていませんでした（念のため）。

　この「発熱する1円玉」を使う偽気功師は、中国では1990年代後半に増えたようです。この技で中国国内の評判を獲得し、日本に呼ばれた気功師が、テレビのニュース番組で取り上げられそうになったこともあります。

　非常にインパクトのある技なので、見せ技として根強い人気があるようで、最近では、2007年10月に来日した齊飛龍（Qi Fei-Long)が、東京でこれを実演し、知らない人たちを驚かせています。


２．著名人と一緒に写った写真を見せる


　アメリカ大統領や日本の政府要人、学術界の大物らと握手している写真を見せて、相手を信用させる。

　これ自体は、詐欺の手口としてよく使われます。これで簡単に引っかかるようでは、引っかかる方が悪いとしか言いようがない。


３．スプーン捻り


　スプーンを曲げるのではなく、ネジのように、スプーンの首の部分を１８０度捻ります。

　これは手品の入門書にも載っている、簡単な力学の応用です。

　1997年、私は、北京で開かれた中国人体科学学会（超能力の研究学会）の大会で、翌日の超能力者の実演に使うスプーンを、他の研究者と一緒に近くの市場に買い出しに行きました。一緒に行ったのは、中国の研究者と、台湾の研究者ら。私は日本の研究者代表として行きました。

　市場でスプーンを買うときに、「これは柔らかいから簡単に腕力で曲がってしまうよ」と曲げて見せたら、「じゃぁ、捻ってみろ」と言われたので、ひょいと捻って見せました。
　食器屋の親父さんに、そのスプーンを渡したら、「うわー！　すげー！　皆、見てくれぇ！」と隣近所の店の親父に見せて回りました（見ているこっちが恥ずかしかった）。
　「じゃぁ、2本重ねて捻ってみろ」と言われて挑戦しましたが、さすがに私の細腕では、2本重ねの状態で捻ることはできませんでした。

　翌日、私の名前は中国人の間で、「日本から来た超能力者！」として広まっていました。
　スプーン曲げを見せてくれとせがまれたので、これは腕力で曲げているんだよ、あなたにもできます、この薄いスプーンなら360度捻りもできます、とやって見せたのですが、なかなか納得してもらえませんでした。

　ひょっとしたら、中国人にスプーン捻りを教えたのは、私かもしれません（笑）。今日、スプーン捻りで私を驚かそうとする齊飛龍（Qi Fei-Long)を見て、惣流・アスカ・ラングレーになりたいと思いました。


４．正体不明のVIPカードを見せる


　自分がアメリカ大統領と非常に親しいと思わせるために、大統領の後援会（？）の会員カードを見せる。

　アメリカ大統領の顔写真が入ったカードなので、「おぉぉ！」とびっくりしてしまう。たぶん、大統領選の頃に、選挙費用を集めるために大量に発行されるカードだと思うが、その方面は詳しくないので。。。

　このカードは、大統領支持者、あるいは献金者を示すか、ひょっとすると大統領官邸の見学記念カードなのかもしれない。少なくとも身分証明書ではない。身分証明書だったら、大統領の顔写真ではなく、本人の顔写真が貼ってなければ意味がない。


５．警察に協力していることを思わせるカードを見せる


　Detective Association というカードを見せたり、警察バッジを見せる。

　一時期警察に勤務していたなら、探偵資格をもっていても不思議ではないが、超能力者として警察に協力していたのではなく、単に武術の強い警官として勤務していただけでしょう。

　退職後も地域防犯に協力するのは結構だが、そういうものを日本で詐欺の道具に使わないでくれ。

　今、日本では「FBI捜査官」を連想させるものがあると、良いイメージを与えやすいと入れ知恵したのは、どこのどいつだ？


６．胃の中に金属や磁石を入れる


　鉄でできた製品や磁石を飲み込んで、方位磁石の針をぐるぐる回す技を見せる人がいます。

　よく見ていると、お腹をぐるぐる回すので、すぐにわかります。
　修行の一環として、ガラスや陶磁器を砕いて食べたり、金属製のスプーンや箸を食べたりすることがあるので、必ずしも悪意があってとは限りませんが、ちょっと普通ではありません。

　胃は、すごく拡張性があるので、フォークや箸が１・２本入っても簡単には破れません。日本でも、道を歩いていた人が急に苦しみだしたので救急車で病院に運んだら、胃に箸やフォークが20本近く入っており、さすがに胃の方も収容しきれなくなって、そのうちの1本が胃壁を破っていたため、緊急手術で取り出したという例があります。


７．未確認の技


　これは伝聞だけで、直接確認していません（2007年10月現在）。しかし、非常に危険な感じがするので、念のために書き記します。

　ホテルの客室のドアの内側に患者を立たせ、自分は部屋の中の離れたところから、ある種のエネルギーを送る。
　何だか知らないが、患者は異常に体が熱くなる。
　ついでにいろんなものが一度に変化する。

　ホテルのドアの近くには、衣装箪笥や靴箱があることが多い。そこにマイクロ波照射機を設置してあるのではないか？　近くで患者を「治療」すると、自分も被爆する可能性があるので、離れた所に立たせるのではないだろうか？
　もし、この想像が本当なら、非常に危険だ。傷害致死事件が起こりかねない。もっと精確に状況を観察できる人の観察報告が欲しい。興奮している人の観察報告は、床に電灯線があっても見落としている可能性が高いので。

2007年10月9日


８．「気」を感じる！


　1996年だったか1997年だったかよく覚えていないが、北京郊外の軍区内に、武術気功を教えている小規模な学園があった。孤児を集めて武術を教えているという話だったが、それだけではなく、気を使った治療も行っており、もっぱら海外から泊りがけで訪れる患者を相手にしているところだった。

　気による治療（回春）を少し見せてもらったが（たぶん、主要な部分）、若い女の子２・３名がベッドに寝かせた患者の全身をパンパン手のひらで叩いて回るというものだった。
　「効くかどうかわからないが、若い子に触ってもらうというだけで気持ちがいい」というものだが、仕上げとして、最後に、椅子に座った患者の第３の眼のところに女の子が「気｣を込めた人差し指を近づけると、ピリッ！とする。
　患者は驚いて、「気を感じた！」と感激する。

　実際には、人差し指を近づける手の反対の手は、女の子の背中側に回っていて、窓のカーテンの下に隠してあった電灯線（たぶん２２０V）の剥き出しの銅線をつかんでいた。つまり、感じたのは「気」は「気」でも、「電気」の「気」。

　これは、他の人が治療を受けるところを写真に撮っていて気がついた。額に近づく指先をファインダー越しに見ていたのでは、死角になってしまうので気がつかない。全体状況を撮るために広角レンズで後ろに引いていたので、すぐにわかったが、ある１点だけをズームで注視するのは、かえって見落としが多くなるという例である。

　他にも人がたくさんいたのに、なぜ気がつかなかったのかというと、多くの人は、「ああ、気持ちよかった。最後に何か感じたけど、あれは何だったのだろう？」と、すぐに部屋の外に出ておしゃべりを始めるからである。自分の体験が自分１人だけの体験なのかどうかを、他の人の体験と照らし合わせて確認する方のが忙しいのだ。

　

2007年10月10日　追記


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